ろくろく人生レポート

66才からの人生探求レポート

東京オリンピックの開会式は悲しくなるほど安っぽかった。中国からの熱烈なオファーで北京オリンピックで衣装担当した石岡瑛子の素晴らしさと中国の本気さをあらためて知る。

東京オリンピックの開会式を観て、日本のアート(クリエイト)のレベルが非常に低いなんてもんじゃないことに驚きと悔しさと恥ずかしさと、一生消えない汚点を残したことに、後世ずっと悩まされるだろう。

前にも書いたが、演出家だけの問題ではない。スタッフの選考、キャスティングの問題もそうとうに失敗だったわけだ。一番の問題は、誰かわからないがクリエイティブを電通に丸投げした者が問題。電通ルートももう人材が枯渇した過去の企業だし、今の日本にはクリエイティブなことに予算を出したりという意識がない。昭和以降、天才と呼ばれるような人材が出てこない理由はそこである。そう、昭和時代はそういった天才的なクリエイターがいた。それが、

石岡瑛子 である。

本当に残念だが偉業を残して70代の若さで亡くなったが、彼女の飛び抜けたクリエイティブ性は、その作品を見れば一目瞭然である。初期の頃より後期になってニューヨークで映画、演劇に傾倒し始めてからの映像と衣装の美は、アカデミー賞を取るなど圧倒された。

彼女が生きていたら、彼女ぐらい開会式といった国を挙げての演出にふさわしい人物はいなかっただろう、が、もう後の祭りだ。もし、彼女だったら・・・そうだったらと想像してみると最高のものができたと思うし、いかに先日の開会式がチンケであったかわかるだろう。

しかし、ここで誰もがあまり知らない事実がある。それは、石岡は2008年のあの北京オリンピックの衣装担当だったのだ!! プライドの高い中国人があえて日本人を起用する・・・これは言ってみれば、それほど石岡が優れたアーティストで彼女以外にはありえない、彼女でなければ成功できない、という目利きが中国にいた、ということである。

以下北京オリンピックでの石岡起用に関する話。抜粋

2008年北京オリンピック開会式コスチュームデザイン担当の石岡瑛子氏。

 2008年北京オリンピック開会式のコスチュームデザインを担当した石岡瑛子氏は9日夜、人民網にゲストとして登場、ネットユーザに開会式のコスチュームデザインについて解説した。また、北京オリンピック開会・閉会式の芸術監督チームに対してもコメントを行った。

 石岡氏は1939年日本・東京生まれ。東京芸術大学美術学部卒業。1980年代に米ニューヨークへ仕事の拠点を移し、国際舞台での活動をスタートした。2007年、北京オリンピック開会式総コスチュームデザイナーの要請を受け、担当が決定した。

五輪開会式について「多くの賞賛の言葉をもらい、すべての疲れが吹き飛んだ。責任は果たせたと思う。いまは爽快な気分」と、大きな達成感に包まれた様子で現在の心境を語った。
 1年前に開会式の総合演出を担当するチャン・イーモウ監督からじかに口説かれたという石岡は、「中国との仕事も、イーモウ監督との仕事も、オリンピックの仕事も、すべて初めてづくしの巨大なプロジェクト。難行苦行で大変な仕事だった。

以下:北京オリンピックの石岡の衣装。

もう観て知ってるだろう。これが北京オリンピックでの彼女のデザインだ、と知った人は、日本人だったのか?!と、驚いて欲しい。そして、あの中国が自国の開催にあえて日本人を(というより彼女しかあり得なかったからだが)使ったのか?の意味を考えて欲しい。それほど中国はプライドを捨てて芸術性に対して真剣に良いものを作ろうと思っていたと言うことである。比べて今回の東京オリンピックでは日本がいかにクリエイティブに対して真剣じゃないか?適当で手抜きであったか、がハッキリわかってしまったのである。自分もクリエイティブの端くれなので)今回の開会式はもう恥ずかしくて(頭の中でだけだが)しょうがない。歌も踊りも絵画もインテリアもデザインも、とかくアートと呼ばれるものは日本はそうとう遅れている、魅力がない、とうことを、わざわざ億という金を使って世界中に知らしめてしまったわけである。

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どうだろうか?北京のショーでの成功は石岡のすばらしさがほとんど左右してると言っていい。中国はかなり人海戦術で大勢を使って圧倒される演出だが、それはそれで別の効果で、このビジュアルの素晴らしさは彼女以外にはありえない。

今回の東京オリンピックは国レベルの開催であるのに、まさに人材、人選、すべてアートに無知な人達の集まり、そして芸術性はそれほど重要ではないんだ、とした人たちの間で進んでいた開催であることがわかる。そして、もう石岡レベルのアーティストは日本にはいない、という悲劇も加わっている。

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ソルトレイクオリンピックではウェアデザインをした。抜粋

ソルトレイクシティオリンピックでは、日本のスポーツウェアブランドであるデサントが提供するウェアをデザイン。「アスリート遺伝子」をデザインコンセプトとし、デサントの開発チームとの協働で、最先端技術とデザインを融合させていきました。

 

石岡は、

「誰もが観たことのない新しいもの」

石岡は我々の大先輩である。つねに新しいもの、誰も観たことのないもの、ということを大事に制作していたと聞いた。現在、本物のアーティストがいない日本は悲劇だ。

まさかマスコミに出てる有名人のアーティストがいるじゃない?と思ったら、あなたはテレビやSNSの中が全てだと思考が犯されている。本物はテレビなど出ないしテレビの演出などしません。今回の東京オリンピックのことをまた言うが、CMデレクターやお笑い芸人上がりのテレビ演出家やものつくりの作家たちは、到底、達することのできない境地で仕事をしてきた石岡を知っているのだろうか?まるで刺激さえ受けないほど興味がないのなら、もう話にもならない。ドランクエストだの漫画だのピクトだの、人を感動させると言うことは、そういう手にとれるような安っぽい身近なものじゃないことを、自称クリエイターはなぜわからないのだろうか?

石岡を知らない人に以下の画像を載せよう。PSRCOのポスターをデザインした人だと言えばわかるだろうか?

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「パスコ広告」・石岡瑛子(左)

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「白雪姫と鏡の女王」

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「ドラキュラ」アカデミー衣装デザイン賞

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「三島由紀夫・金閣寺」

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映画「セル」は肉感的で精神をくすぐるすばらしい映像&衣装&ステージデザイン。主演はジェニファー・ロペス。

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「ザ・セル」

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「落下の王国」 

悲しいかな、今後100年は彼女のような本物の芸術家は現れないだろう。